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「環境づくりは人づくりから」サマースクール・レポート「環境づくりは人づくりから」
サマースクール・レポート

「環境づくりは人づくりから」サマースクール・レポート IMAGE

森は海の恋人×MAMMABABY

2024年8月初旬、場所は宮城県気仙沼。MAMMABABY「Blue&Greenぷろじぇくと」は、『NPO法人 森は海の恋人』と共同で、(*1)日帰りのサマースクール(自然体験学習)を開催しました。森と海が隣接し、山から海までの繋がりを感じられる美しいこの場所にあふれたのは、子どもたちの弾けるような笑顔! そんな楽しい一日を振り返りながら、自然体験にはどんな魅力があるのか、『(*2)森は海の恋人』副理事の畠山信(まこと)さんにお話を伺ってみました。

*1
「森は海の恋人×MAMMABABY共同開催サマースクール」の詳細はMAMMABABY公式インスタグラム、FRaU WEBでも紹介されました!

*2
NPO法人 森は海の恋人
「環境教育」「森づくり」「環境保全」の3分野を軸として活動する団体。子どもたちの教育活動や豊かな生態系の維持、その先に繋がる川や海の環境保全に日々向き合っています。


自然体験で出会う「衝撃」から得るもの

Q「森は海の恋人」とはユニークなネーミングですが、どうしてこの名前が付けられたのですか?

実は経緯を遡れば長いのですが、昭和40年代、気仙沼湾の海で異変が起きていたことから始まります。海苔養殖が水質悪化によって全滅。夏には、赤潮プランクトンによって牡蠣の身が真っ赤になる“血牡蠣”が発生するようになりました。さらにその後、宮城県が気仙沼市にダムを建設する計画を公表したのです。カキ漁師である私たちは「漁場を守るためには、上流の森林を守らねば」という思いで、平成元年にダム建設の反対運動を始めました。

なぜ「海のために森を守らないと」と考えたのか。その理由は、気仙沼の地形にありました。一般的に海のイメージが強い気仙沼ですが、実は広大な森を背にした、山から流れ出てくる水が豊富な町。山里で湧いた良い水で育ったお米を、海辺で醸して日本酒にする文化もあるのです。そんな「森と川と海は繋がっている」という意識を、行政、そして流域の住民の方々に持ってもらいたいと考え、人々の心に打つキャッチフレーズを掲げることになり、気仙沼の有名な田園歌人・熊谷武雄のお孫さんにあたる熊谷龍子さんに、一句お願いしました。その歌がこちら。

“森は海を 海は森を恋ながら 悠久よりの愛 紡ぎゆく”

森と海は、相愛の関係であるというメッセージが込められています。言葉の力は大きく、人の心を大きく揺さぶりました。これが「森は海の恋人」の名前の由来です。ダム建設計画は中止となりましたが、もしダムができていたら川の水量は減り、海の生態系、特に沿岸域の生態系は大きく変わっていたのではないでしょうか。気仙沼は、外洋の波があまり入らない穏やかなリアス式海岸なので、陸に近い場所での、カキやホタテの養殖が水産業の主力。そういった産物に大きくダメージがあったかもしれないのです。

Q現在はどんな活動をされているんですか?

山に木を植えると同時に、植えた木や水質、生物がどう変わっているのかを調査しています。そしてもう一つが「環境教育」。自然を良くするも悪くするも、評価するも人。だからまずは、人の価値観を育てたいという思いがあるのです。通年、国内外さまざまな場所で団体や企業向けの環境教育を行っていますが、中でも、子どもたちを対象とした体験学習とキャンプには特に力を入れています。

現在、日本の教育制度の課題でもありますが、今の子どもたちは絶対的に、自然に触れる機会が少ないように思います。「自然は大事」という思いは誰にでも当たり前にあり、頭では「大事」と思っていても、何かきっかけがないと行動に移せないのが現状。だから私たちは、その自然体験の場を開いているのです。

「うわ、この生き物、気持ち悪ぃ!」って思ってもいいんです。昆虫を専門としている私だって、「昆虫って綺麗だな」とは思っても、「心地いいな」って思ったことはありません(笑) その感覚を“体験”を通して覚えることが大事なのです。というのも、体験したことは、人にとても伝えやすいんですよね。教科書で得る知識より、体験から出る言葉のほうが重みや深さが全然違う。授業で用意された虫を見るのと、全く無知な状態で自然の中で出会うのとでも、感じ方は全く違うはずです。

また、子どもの頃に体験したことは、将来、何か行動を起こす時の原動力になります。人間の記憶は7 割は「衝撃」、3 割は「刷り込み」でできると言われていて、子どもの頃に「すげー」とか「楽しい!」と感じた記憶は消えないんです。つまり、その衝撃を持っていると、大人になっても「自然は大事。楽しい自然を壊しちゃいけない」という感性が芽生えやすい。それこそが、自然保護において一番強い力になるものだと私たちは信じています。

好奇心の根源は、心のゆとり

Qこの夏、「MAMMABABY」とコラボレーションしていただいたサマースクールでは、子どもたちからどんな声が聞こえてきましたか?

一番リアクションがすごかったのは“食べ物”。人は普段口にするものほど興味を持ちやすいので、今回のサマースクールでもそこを取っ掛かりにしました。カキはどんな環境で、どのように育てられているか? どんなものを栄養にしているか? 「プランクトン」という言葉は知っていても、実際に見たことも触れたこともないわけで、生きたプランクトンを捕まえて拡大して見せたときは、全員、顔が引きつっていました。「うわ、きっしょっ!」って(笑) そりゃそうですよね、さっきまで遊んでいた海に、奇妙な奴らがうじゃうじゃいるんだから。

また、カツオを捌いて胃の中に入っているイワシを覗いたのも、かなり衝撃だったようです。生きているものを扱うのはかなりインパクトがある。だからこそ、彼らの記憶にずっと残っていくと思うんです。その先で、生態系に興味を持ち、「この奇妙な奴らがいなかったら、海産物って育たないよね」という理解に繋がっていけたらいいなと思います。


森の中を歩いた時間も、子どもたちは発見でいっぱいの様子でしたね。

土の上を歩き続けること自体、日常生活ではあまりないですからね。それに一見静かな森でも、実はいろんな音が聞こえてくるんです。「なんかカサカサって聞こえたんだけど!」って。じゃあ、それは一体何の音なのか? 生物を専門とする我々はだいたい音の正体がわかるので、そこで答えを教えてあげました。我々がいつも行っている宿泊キャンプでは、夜に森を探検することもあります。暗闇の中ではスリル感も満点。自然の中に身を置いて五感を覚ます。その五感が、生きるうえでの価値を生むのです。



Q海で自由に遊ぶ時間もみんな楽しそうでした。こういう時間にも何か意図がありますか?

最初から「磯の生物を観察したいです」なんて言う勉強熱心な子は、正直そんなにいません(笑) それより「泳ぎたい!」という子のほうが圧倒的に多い。だったら、泳ぎに行こうとなるわけです。ただ泳ぐ前に、そこにいる生物や地形のことをちょっと頭に入れてから行くと、ただ「楽しかった!」だけで終わらず、何か発見につながるのです。計画通りのプランをこなすだけではなく、子どもたちがのびのびと自分自身で楽しみを見つける時間があると、心にゆとりができます。そのゆとりが、ものごとへの好奇心につながっていくのだと思います。

ちなみに、普段の生活で与えられたことだけをやっている子は、サバイバル能力が極めて低いように感じます。一方、自分で考える力を持っている子は、創意工夫が素晴らしい。自然という不便な環境は、そんな考えをめぐらすことのできる、絶好のチャンスなのです。

たとえばキャンプでテントを固定するためのペグを打ち込む際、「ハンマーがないから打ち込めない」と途方に暮れる子どももいるのですが、それならその辺に落ちてる石を使えばいいんです。これがないとダメだと決めつけず、自由に発想する。そんな脳ミソの緩さは、必ず生きる力になります。

自然を学ぶ、以上に、人を学ぶ楽しさを


Q学校や習い事とも違う、見知らぬ子同士が自然の中で一緒に過ごす時間には、どんな魅力があると思いますか?

自然の中での集団行動、しかもそれが初対面ともなると、やっぱりそれなりのストレスがかかるんですよね。特に宿泊型のキャンプは顕著で、たとえば食事の時間、自分は一生懸命手伝っているのに、全然手伝わない子がいると、「あいつ何なんだ?」みたいな話からケンカに発展したり。

でもそれがリアルな人間社会。気が合わないのは、大人でもあること。だから、「自分と違う人がいるのは、ごく普通にあること。だから安心しろよ」と伝えています。そのうえで、合わない子とも一緒にやらなければいけない状況下、どう折り合いをつけるか?と考えることが、教育なんだと思います。

また、子どもって普段、塾やら宿題やら何かと時間に囚われていますよね。今どきは公園でも「ボール遊び禁止」「大声禁止」とかの制約が多い。そういう縛られた生活をしていると、知らずと自分の型を作る癖がついてしまうのではないでしょうか。
一方、自然にはそういう制約がなく、大声で叫びたかったらどれだけ叫んでもいい自由さがあります。そんな携帯の電波も届かないところで遊ぶしかない子どもたちを見ていると、どんどん解き放たれていく様子がわかります。解き放たれ、ある程度無茶をすると、やがて「何をしたら危ないのか」「何をしたら人が嫌がるのか」が自ずと見えてくる。そして、自分の立ち位置や強み、弱みというものが見えてくるようになるんです。
「森と海の繋がりは云々…」というのは、もちろん知ってもらいたいこと。ですが、今回のサマースクールでも、実は子どもたちが一番得たのは、“人を学ぶ楽しさ”だったかもしれません。

Qちなみに、体験学習に送り出す親としては、どんな心構えが必要ですか?

たまに、「自分は本当は行きたくない」と思っているのに、親の意志だけで入れられるパターンがあるんです。参加するのは子ども本人なので、行きたいかどうかをきちんと聞いて、参加を決めるというのは大前提ですね。逆に、出発を見送る際、なかなか子どもから離れられない親御さんもいたりします。気持ちはわかるんですが、送り出す勇気をぜひ持っていただけたら!

また、「うちの子に協調性を教えてやってください」とおっしゃる方もいますが、協調性は教えるものではありません。たった1日や3泊4日のキャンプで備わるものでもない。それに、その子にとって自然体験で得るものが本当に「協調性」でいいかどうかは、その子にしかわかリません。この体験を通して何を受け取るのかは、一人一人みんな違うのだから。

一番大事なのは、体験学習が終わった後、「どんなことをやった? 何を感じた?」と、家庭で会話をしていただくこと。たぶん大抵話に上がるのは、森と海の繋がりの学びより、人間ドラマな話(笑) ですが、それも大きな学び。子どもにも大人にも、「環境づくりは、人づくりから」というメッセージが伝わると嬉しいですね。

Everything will be alright.We are right here for you.

SMILE